草刈り機を使って
      草刈りをすることで
         ホタルに与える影響

 春になって気温、水温が上がるとゲンジボタル幼虫やヘイケボタル幼虫がカワニナを捕食して上陸に備えます。
 岐阜県中濃地域でも温暖化の影響を受けゲンジボタル幼虫の上陸が10日前後早くなって4月初旬には、上陸するようになりました。
 上陸した幼虫は、水辺周辺の地面の割れ目や窪みを探し潜ります。コンクリートブロックを積み上げた川や水路でも這いあがり浅い土に潜り土を固めて土繭をつくります。繭の中で前蛹、蛹化、羽化して5月中旬には、夜空を飛び交います。

 ホタルの生息地では、草丈が伸びると景観が悪いといって草刈り機を使って水辺周辺の草刈りをすることがあります。
 幼虫の上陸するころ〜産卵、孵化して小さな幼虫が水に入るまでの間、草刈りをしないほうがいいと考えています。

    草刈機で、草を刈ることで多くのホタルが犠牲になっています。




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 最近の草刈機は、高速回転エンジンで鋭利な刃やナイロンコードカッターを使って草刈りをします。
@ 草刈り


 
草を刈らない方が良い理由
 草刈り機を使って草刈りをすることで次のようなホタルに悪い影響を与えます。
 草刈りをする時小刻みに歩いて移動します。・・・歩くことで多くの幼虫や土繭を踏みつぶしています。
 草刈機の刃やナイロンコードカッターで陸に上がった幼虫や土繭を飛ばしたり切り刻んでしまいます。
 ホタルが飛んでいる時期に草刈りをすると水辺の草むらに止まっている成虫や産み付けられた卵を飛ばします。

A (わるい草刈り方の例) コンクリートブロックを積み上げられています。草を刈って景観はいいかもしれませんがホタルにとって最悪です。法面の草を刈ったことで土繭が踏みつぶされたり草刈り機の刃で吹き飛ばされてしまいます。
 この付近のホタルが激減したことを経験しています。

B
(いい草刈り方の例) ヨシでわかりませんがコンクリートブロックで積み上げられています。
 道路沿いの境い付近には、イノシシが侵入しない様、電気柵が貼ってあり電線に草がかからない様草刈りをしてあります。
 景観は悪いかもしれません・・・ホタルのために法面の草刈りをしなかったことで沢山ホタルが飛び交いました。

 道路沿の草を刈る時は、道路から20〜30cmまで。
 ホタルが終わって1ヶ月後からは法面の草刈りも可能になります。
A 刈り取った法面 (わるい例)

B 法面の草を刈らない (いい例)

 ホタル幼虫に影響を与えない時期はいつか
 11月初旬〜3月中旬ごろまでは、流れの緩い所に溜まった砂地の中、石の下、草の根に潜り過します。この時期に川の掃除や法面の草刈りをするといいでしょう。
どうしても草刈りをする必要のある場合もあります。 そんな時は、検討してお決めください。

 余り知られていないホタルの上陸から孵化までの画像を紹介しています。
 草刈り機を使って草を刈ることでホタルに何らか悪い影響を与えることを想像してください。
 ゲンジボタル幼虫は、終齢幼虫になると青白い光を発しながら蛹になるため陸に上がり地面の割れ目や窪みをみつけ潜ります。繭の中で前蛹、蛹化、羽化して雨の日、地表に出てきて夜空を飛び交います。そして、交尾、産卵、孵化して水に入ります。
 個体によっては、陸に上がってから40〜50日で羽化して夜空を飛び交い交尾、産卵、孵化して水に入るまでに30日前後要します。

 また、遅れて上陸する個体もいます。その分、何日か遅くなることも考慮しておきましょう。

 
幼虫が土に潜って繭をつくる深さ
 ゲンジボタルの幼虫は、地中1cm〜2cmの深さに繭をつくります。
 ヘイケボタルの幼虫は、地表0〜地中1.5cmに繭をつくります

 岐阜県加茂郡川辺町神坂地域では、「ゲンジボタル」「ヘイケボタル」と陸生の「クロマドボタル」を確認しています。
 陸生ボタルの「クロマドボタル」は、卵期、幼虫期、蛹期、成虫期の一生を草地や積った枯葉の中、石の下で生活しています。

C〜Nは、幼虫が上陸して〜孵化までを紹介

C 水から離れた直後の幼虫。(上陸)
 蛹になる為雨の夜、水から離れ地面の窪みや割れ目を探して移動します。

 
潜るところが見つからない時は、草の根本や枯葉などの陰で昼間を過ごし夜になると潜る場所を探して移動します

D 潜ったところで体を丸める。
 潜るところがみつかると体を丸めて蛹化が近づくまでその場でじっとしています。
C 上陸直後の幼虫

D 潜ったところで体を丸める

E 繭をつくる
 
蛹化が近づくとBのようなところへ潜り込んだ幼虫は、体をねじりながら周りの土を糊状の液で体を包み込むように繭をつくります。
 (周りに土が無い時は、繭をつくらないこともある)

F 
掘り出したゲンジボタルの土繭(つちまゆ)
 地面から約2pの浅い地中に土を固めてつくった繭を見つけ掘り出しものです。
繭の中で前蛹、蛹化、羽化まで過します。
E 繭をつくる

F 掘り出した繭

G〜Kについて、繭の中で見ることができませんが観察するため繭の一部を切り取り撮影しています。
G 前蛹
(繭の中で体を丸め幼虫の身体から蛹の身体につくりかえる)。
H 蛹化(幼虫の殻を破り脱皮中。
G 前蛹

H 蛹化(脱皮中)

I 蛹化。
J
羽化(蛹の殻を破り脱皮中)。
I 蛹化

J 羽化

K 羽化直後野羽の色は、薄いグリンから黒く変色。 繭の中で成虫の身体になって成熟すると雨降る日を待ち柔らかくなった繭を破り地表に出ます。
L 草木の葉に止まりメスボタルが光でオスボタルを呼び寄せ交尾。
K 成虫

L 交尾

M 産卵(水辺に近いコケや枯葉、木のみきなどに卵を産み付けます。
N 孵化の瞬間です。孵化した1mm前後の小さい身体で水に入ります。
M 産卵

N 孵化

ゲンジボタルは、卵で産まれ〜孵化して水に入るまでの期間がおよそ21日〜23日。
ヘイケボタルは、卵で産まれ〜孵化して水に入るまでの期間がおよそ18日〜20日。